ISOコンサルタント:トップ > ISO14001取得支援 > ISO14001:2015要求事項解説A
【5.1リーダーシップ及びコミットメント】
どの様なマネジメントシステムにおいても、トップのコミットメントとリーダーシップがなければ、有効な仕組みとして機能しません。ここでは、EMSの有効性を担保するためのコミットメントとして、「汚染の予防及びその他の環境問題への対処」、「順守義務を満たすこと」、「EMSの継続的改善」に関する約束と説明、及びEMS運用の結果の説明を求めています。また、5.1c)では「組織の事業プロセスへのEMS要求事項の統合を確実にする」という要求をしており、「本業の中で実施してこそ効果が上がる」という事を明示しています。
【5.2環境方針】
5.2でも4.4「EMS」と同様に、環境マネジメントシステムの共通要求事項にプラスして「環境パフォーマンスを向上するために」という環境固有の要求事項が追加されています。ISO14001:2004での「EMSの継続的改善」から、ISO14001:2015では「環境パフォーマンスの改善」に重点を移していることを強調していることになります。
【6.1 リスク及び機会への取り組み】
「リスク及び機会」とは、「潜在的で有害な影響(脅威)及び潜在的で有益な影響(機会)」と定義されています。リスク及び機会の発生源は@環境側面、A順守義務、B特定されたその他の課題及び要求事項、の3つにおいて、@EMSの意図した成果の達成を確実にする、A望ましくない影響を防止・低減する(旧規格では「予防処置」)、B継続的改善を達成する、の3つの目的に限定して考えます。@環境側面に関するリスク及び機会の決定については、規格では「著しい環境側面」とは記されていません。ゆえに、自分たちで様々な観点から考慮して基準を決定して取り組みの対象を決定していきます。
【6.1.2 環境側面】
6.1.2は環境固有の要求事項ですが、ISO14001:2015の要求事項に「ライフサイクルの視点を考慮し」という文が追加されています。ゆえに、ISO14001:2015では、原材料の取得から最終廃棄に至るプロセスにおいて、外部委託も含めた環境側面を十分検討する必要があります。また、環境側面は「組織が管理できるもの、及び組織が影響を及ぼすことができる」と要求されており、管理できる環境側面とは「組織が自らの意志で制御できるもの」、影響を及ぼすことができる環境側面とは「組織の決定が外部環境に影響を与えるもの」となります。
【6.1.3 順守義務】
ISO14001:2015では「順守義務」において、「環境側面」にどのように適用するか決定する、ではなく「組織に」どのように適用するか決定する、に変更されており2004年度版よりも包括的な内容となっています。ISO14001は、組織が法的義務以外に自主的な取り組みを推進する仕組みとして規定されているため、法令順守の徹底だけでは価値が半減します。下表を参考として自主的な義務をできるだけ広く取り入れ、組織のコンプライアンスの一部分を「EMSが分担している」という広い視野のなかで、各部門が自らの業務に関わる順守義務に責任を持つことが望ましくあります。
【6.1.4 取り組みの計画策定】
ISO14001:2015では、@著しい環境側面、A順守義務、Bリスク及び機会への取り組みの計画が求められています。取り組みの方法としては様々な選択肢があり、事業プロセスへの統合という観点から計画します。また、取り組み計画には、経営資源の裏付けのないものや、事業戦略の優先順位とかい離した形だけで実態が伴わない計画は排除しなければなりません。
【6.2.1 環境目標】
ISO14001:2004では、JIS化において「objective」を「目的」、「target」を「目標」と和訳していました。しかし、この和約をそのままISO14001:2015にあてはめJIS化すると、環境目標がなくなり、要求事項の解釈がおかしくなってくるという現象がおこります。そこでISO14001:2015のJIS化においては「objective」を「目標」に訳することをきめました。また、「測定可能な環境目標」という要求事項は「定量的」に限定されることはなく、「定性的」なものも含みます。
【6.2.2 環境目標を達成するための取組みの計画策定】
ISO14001:2015の6.2.2では「環境パフォーマンス改善」に関して、「誰が、何時までに、何を実施し、その為にはどのような資源が必要で、結果の評価方法(測定可能な指標)はこのように実施する」という事を含めて計画を策定することを要求しています。
【7.2 力量】
ISO14001:2004力量を決定すべき「対象者」は「著しい環境影響の原因となる可能性をもつ作業者を実施する人」に限定していましたが、ISO14001:2015では「環境パフォーマンスに影響を与える業務、及び順守義務を満たすことに影響を与える義務を行う人」に大幅に拡大しています。更に、教育訓練などで力量を担保させるための措置を取った場合、その教育訓練の有効性を「達成すべき結果」に基づき評価することを要求しています。
【7.3 認識】
7.3のタイトルは英文では「awareness」となっており、和訳(JIS Q 14001:2015)は「自覚」ではなく「認識」とされています。認識する内容は4つが指定されており、簡単に表すと、@環境方針、A自分の業務の環境影響、B自分の業務がEMSの内に貢献しているか、CEMSに適合しない場合の意味、になり、全社員参加を促す内容になっています。
【7.4 コミュニケーション】
ISO14001:2015では7.4コミュニケーションを強化しており、環境固有の要求事項として「順守義務を考慮したコミュニケーションプロセスの確立」が求められています。組織がコミュニケートする相手(顧客、供給者、行政、地域社会、投資家、従業者など)ごとに何を、いつ、誰に、どの様に、を明確にし、コミュニケーションプロセスを確立します。
【7.5 文書化した情報】
ISO14001:2015の大きな変更点として「文書化」に関する要求事項が挙げられます。ISO14001:2004では文書化する事項が明示化されていたのに対し、ISO14001:2015では多くの文書化した情報は「組織が必要と判断したもののみ」といったように、組織主導での判断に任されています。また、文書化した情報は「あらゆる形式の媒体」で作成可能であることも明確にしています。
【8.1運用】
ISO14001:2015では、運用管理の対象が「著しい環境側面に伴う運用」から「EMSの要求事項を満たすため」及び「6.1 6.2で特定した取り組みを実施するため」に拡大されています。特に、6.1で特定した取り組みには、「著しい環境側面」、「順守義務」、「リスク及び機会」に対する運用管理がすべて含まれます。また、生産拠点が先進国から発展途上国への移転が加速化する中、自国(または自社)のCO2排出量は減少しているものの、国外(または他社)のO2は増加し、地球全体で見るとむしろ増加しているという事もあり、外部委託プロセスの管理責任も大きく強化されています。
【9.1監視、測定、分析及び評価】
ISO14001:2015では、付属書SLで監視測定の対象、方法及び時期の決定、分析と評価の方法及び実施時期を明確にすることを求められており、環境固有の要求事項として、「環境パフォーマンスを評価するための基準及び適切な指標」が追加され、評価するうえでの「基準」と「適切な指標」の決定が求められています。また、箇条9のタイトルが「パフォーマンス評価」であり、ISO14001:2015改定では「環境パフォーマンスの強化」の重要性を明示しています。
【9.1.2 順守評価】
順守評価の中でも「法令順守」は、EMS認証と社会的信頼性を維持するうえで死活的ともいえる重要事項です。順守評価において最も重要なことは、「順守評価者」の力量の確保になります。順守評価者が十分な力量を伴っていないと形だけの評価になってしまい、環境パフォーマンスに悪影響を与える懸念が生じていきます。
【9.2 内部監査】
ISO14001:2004では内部監査は「EMSが適切に実施され、維持されていることの確認」が要求していましたが、ISO14001:2015では「EMSが有効に実施され、維持されていることの確認」に変更されました。これは、2000年代に入り、「ISO14001の認証取得だけが目的で成果(パフォーマンス)が上がらなくてもよい」とする組織が世界中に多くみられたことが明らかとなったためです。今回の改定で「有効性審査」が必要であるとの声が上がるようになり要求事項に反映されました。
【9.3 マネジメントレビュー】
マネジメントレビューでは、環境固有の要求事項として、「事業プロセスと統合されているか」(通常業務の中に溶け込んでいるか)を要求しています。また、グローバル化の進展やIT技術の急激な変化、気候変動及び資源問題を中心とした地球環境問題の深刻化など、組織を取り巻く環境の加速に対応するため、b)「次の事項の変化」において、「EMSに関連する、内外部の課題」、「順守義務を含む利害関係者のニーズ及び期待」、「著しい環境側面」、「リスク及び機会」の4つが列記されています。
【10.3 継続的改善】
ここでも、今回の改定におけるメインキーワードである「環境パフォーマンス向上」を強調するフレーズが追記され、EMSのシステムの改善ではなく、EMSの有効性を改善し、実施結果である環境パフォーマンスを継続的に改善することが明確に要求されています。ISOの初版開発時は、「EMSの有効性の継続的改善」というフレーズを入れることにアメリカが絶対反対の姿勢を崩さず、実現できませんでした。有効性の継続的改善とは最終的に環境負荷をゼロにすることを求めることになり、ありえないとしたためです。しかし、近年の急激な地球環境の悪化やISO14001認証の信頼性が揺らぎ始めた事もあり、今回の改定審議では、アメリカをはじめとしたほかの国々もこの表現に異を唱える事はありませんでした。結果が改善されなければ意味を持たないという認識が全ての国で統一されたためです。それほど、今回の改定では画期的な変化であるといえます。
※ ISO14001:2015規格要求事項(2004年度版対比)はこちら
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